末次由紀の漫画「ちはやふる」第1〜30巻
この10年くらい、諸事情により普段まったく漫画は読んでいない。
半年に1回、まとめて何十冊を単行本で読むようにしている(基本的にはツタヤでレンタル。非常に気に入ったものは購入することもある)。
別に新しいものをチェックする、流行ものを追うとい気持ちがまったくないので、人気が冷めたくらいで読むのがレンタルしやすいのでちょうどいいと思っている。
ということで、この1ヶ月に50冊以上を読んだ。
ここで感想を書いていた「黒子のバスケ」「セキセイインコ」については最終巻までを今回読んだ。
感想メモを書いていたものは引き続き書くようにしていたのだが、この2作品については書くと否定的なことにばかりなりそうなので書くのはやめておく。
ただ、「セキセイインコ」については悪い方に予想していた展開で終わってしまったので非常にがっかりした。これは作者というより担当編集に責任があるのではないだろうか。
かっこいい見せ場(作者が思うところの)を描きたがる作者に物語を紡がせることができないとしか思えない。
「黒子のバスケ」については読んでいて憤るほどではないが、もう少し盛り上げてほしかった(レンタルなので客としてそんなに言えたものではないが)。
「テラフォーマーズ」については読み進めるのを中断しているが、まあいいか、という感じだ。
「四月は君の嘘」は最終巻まで読んだ。
久しぶり読むと予想以上に心を動かされた。前回読んだときはあまり気に入らなかったのだが。。。
気持ちよく読むことのできる漫画だった。素直に泣けた。
「宇宙兄弟」は22巻まで感想メモを残している。今回、引き続き読んだがどうも以前ほど物語に引き込まれなくなっている。六太の月面着地は物語としては大きなクライマックスのはずなのだが、非常に盛り上がりをかけたものに思えた。読みやすく、かつ読んでいて心地よい漫画なので、気休めにはとてもいい漫画なのだが。。。
山本英夫版「スパイダーマン」みたいな「HIKARI-MAN」も引き込まれるものはあったが、読んでいて気分が良くなる作品では当然ない。あまり惹かれるものがなくなってきている。年を取ったせいかもしれない。
ただ、読んでいて気分が滅入ってくるような漫画はメジャーなものでもこの20年くらいでかなり増えてきたような気がする。どういうことなのだろうか。
結局今の時点で新たに読んで、心に残ったのは「亜人」「僕だけがいない街」とこの「ちはやふる」くらいだった。
まず「ちはやふる」の感想メモを書き、そのあとで上記2作について記録を残すことにする。
ここで中断。徐々に更新していこう。
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「ちはやふる」についての感想メモ
読み始めたところではこんな話かと思っていた。
ネタは「かるた」というマイナーな競技。
主人公はちょっとずれたところもある元気な美少女【ちはや】。
その幼馴染の超イケメンで勉強もスポーツも抜群にできる、しかも医者の家系で邸宅のような家に住んでいる少年【まつげ君】。まつげ君はちはやに気がある。
そこにナイーブなところもあるメガネ君【あらた】が登場。
メガネ君はカルタ名人の孫で、あらたと出会ったたちはやとまつげ君は「かるた」の世界にはまっていく。
確かにそういう趣旨の話ではあった。
ただ、そこからこぼれてくる上記の主要キャラクター以外のサブキャラの「物語」が私には面白かった。
ちはやとまつげ君は、高校でかるた部を創設。
【肉まん君】と【机君】、呉服屋の一人娘【かなちゃん】を部に引き込み活動を始める。
その3人がまつげ君邸を訪れた際、まつげ君の母は息子にこう語る。
「冴えないわね、かるた部の子たちって」
それはそうである。
机君はメガネのがり勉、肉まん君は猪八戒のような肥満体の風貌。
ルックス抜群でスタイルもいいちはやとまつげ君と比べると、違った種類の生物といえるくらいの造作の違いがある。
その冴えないサブキャラが主要キャラ以上に見せ場を作ってくれるのである。
まつげ君の母も29巻ではこう語る。
「かるた部の子たちって冴えないなぁって思ってましたけど、かっこいいじゃないですか」
そういう世界、物語が私にはとても読んでいて心地よく、心を動かす部分だった。
ほかにも冴えないサブキャラは登場するのだが、その中で特筆すべき存在なのが【ヒョロ君】である。
ヒョロ君は物語の初期から登場するのだが、“ひょろ”っとした体、面長で情けない顔立ち、さらに妙なボディアクションを見せる。“珍妙な生物”といっていいようなキャラクターで、途中で消えるか、少なくとも物語の主要な部分にずっとかかわってくるとは思えなかった。
それが違うのである。
ヒョロ君は競技かるたの技量上達では皆からおいてけぼりを食うのだが、そのなかで執拗なまでに必死にもがき続ける。
さらにヒョロ君に彼女ができるのだが、その女性は肉まん君のお姉さんである。
造形的には肉まん君の髪型を変えて女装させたといっていい感じ。
彼女が負け続けてるヒョロ君を支えていくのである。
その姿が感動を呼ぶのだ。
美男美女の対極にあるルックスの恋人同士がコメディリリーフでなく感動させるのである。
ほか57歳の【原田先生】の名人戦への挑戦をたっぷりと読み応えのあるものとして書くなど、主要キャラだけでなく、物語世界にいる、さまざまなキャラをいい感じで描いていることに非常に好感を抱き、読んでいていい気分になることができた。
引き続き読んでいきたいと思う。