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伊坂幸太郎の小説「火星に住むつもりかい?」

 

火星に住むつもりかい?

火星に住むつもりかい?

 

帯にあるアオリと梗概はこんな感じ。

この状況で生き抜くか、もしくは、火星にでも行け。希望のない、二択だ。

密告、連行、苛烈な取り調べ。
暴走する公権力、逃げ場のない世界。
しかし、我々はこの社会で生きていくしかない。
孤独なヒーローに希望を託して――。
らしさ満載、破格の娯楽小説!

 

住人が相互に監視し、密告する。危険人物とされた人間はギロチンにかけられる――身に覚えがなくとも。交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが…。今年安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、ついに刑に処された。こんな暴挙が許されるのか?そのとき!全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、平和警察の前に立ちはだかる!

上記の“らしさ満載”というのは、“ものすごく伊坂幸太郎らしい作品”ということなのだろう。

あとがきによるとこの小説のタイトルはデビッド・ボウイの「ライフ・オン・マーズ?(LIFE ON MARS?)」に由来しているそうだ。

タイトルから宇宙ものの話だと思われた方がいたら、申し訳ありません。自分でもどうにもできない恐ろしいニュースを目にし、落ち込んだ時、デヴィッド・ボウイの名曲「LIFE ON MARS?」を聴くことがあります。この曲名の和訳は、この本のタイトルのような意味だと(調べもせず)勝手に思い込んでいたのですが、実際には、「火星に生物が」という意味だと知り、恥ずかしくなった思い出があります。(P400)

読んだあとに作者の意図はどんなものかと思い、ネットで作者へのインタビューを読んだ。

http://books.rakuten.co.jp/event/book/interview/20150219-isaka-kotaro/

サム・ライミ監督によるスパイダーマンシリーズを意識して執筆したとのことだった。

平和警察という組織が治安維持のため現代の魔女狩りシステムを構築した日本が舞台というお話である。

組織による個の抑圧、正しきこととは何か、ヒーロー、追われる主人公が抑圧する組織に抵抗するといったことが描かれているあたりは伊坂作品の一連の作品の流れにあるものだった。読んでいて「ゴールデンスランバー」を連想した。

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

 

 

今回、興味深かったのは、物語上の主役がリレー式にコロコロと変わっていくところ。

そして、途中から登場した捜査官の印象が強く、「もしかして、これは“捜査官もの”のミステリー連作を目論んでいるのでは」などと邪推したが、その予想はあっさり裏切られた。

この小説に登場するキャラクターは他の伊坂作品に登場しているのでは、とも思えたが、はっきりと描かれていないので、結局よくわからなかった。

デビッド・ボウイの「LIFE ON MARS?」は、聴いていると緩い感じで始まるが、中盤で内面から力がみなぎってくるような妙な展開の部分がある。
その部分とか、ヒーローものを書くことにつながるものがあったのかもしれない、などと思った。

ただ、この曲に癒されるというのは妙な感性の持ち主という気もする……

www.youtube.com

実は、この小説読んだのが1ヶ月ほど前のため、記憶がもう薄れている。
ということで、断片的だが、感想メモとしては以上。