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ニコラス・シャクソン「タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!」

書籍

タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!

タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!

立花隆の書評などで紹介されているのを見て読んでみようと思っていたノンフィクション。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20120318/1332079164

オビの文字を見るだけで、どんな内容か興味を引かれる。

表表紙オビ
タックスヘイブンをめぐる驚愕の事実!!
富裕層タックスヘイブン租税回避地)に所有している資産はアメリカのGDPの総額に匹敵する!
イギリス大手企業700社のうち3分の1は本国でまったく税金を払っていない!
タックスヘイブンによって、途上国は毎年1兆ドルの資金を失っている!

裏表紙オビ
史上最大の詐欺行為を暴く!
大企業から個人資産家まで、“合法”の名のもとに
世界の富の4分の1を呑み込むタックスヘイブン
この深い闇に切り込んだ本年最高のノンフィクション!

カバー裏にはこんな言葉
タックスヘイブン租税回避地)が犯罪の世界と金融エリートたちを、外交・情報機関と多国籍業を結んでいる。紛争を促進し、金融の不安定を生み出し、大物たちに莫大な報酬をもたらしている。それはまさに世界を支配する権力の縮図なのだ。

上記の文章からすると、陰謀論を好む人なら大喜びしそうな書籍だ。
だが、内容はベンジャミン・フルフォード副島隆彦といった人の本とは違ってごく真面目な内容。
著書はイギリス人で、王立国際問題研究所なる有力シンクタンクの研究員とのこと。
この本は2011年初めに国内で出版されベストセラーになったそうだ。

目次は以下のようになっている。

プロローグ 表玄関から出て行って横手の窓から戻ってきた植民地主義
第1章 どこでもない場所へようこと
オフショア入門
タックスヘイブンという巨大裏金脈
・三大オフショアグループ
・世界一重要なタックスヘイブンは「マンハッタン」
・オフショアシステムが世界金融を腐敗させる

第2章 法律的には海外居住者
ヴェスティ兄弟への課税
・オフショアの起源
・信託の活用

第3章 中立という儲かる盾
ヨーロッパ最古の守秘法域、スイス
バーゼル商業銀行の顧客リスト
・第二次大戦中の動向

第4章 オフショアと正反対のもの
金融資本に対する戦いとケインズ
・所有と経営の距離 ケインズの予言
プレトンウッズ体制とケインズの奮闘

第5章 ユーロダラーというビッガーバン
ユーロダラー市場、銀行、および大脱出
一九五五年 シティ・ミッドランド銀行
ジョージ・ボルトンイングランド銀行入り
準備金既定とオフショア
ユーロダラーという「危ないカネ」

第6章 クモの巣の構築
・イギリスはどのように新しい海外帝国を築いたのか
・アメリカのマフィアとカリブ海オフショア・ネットワーク
ケイマン諸島イギリス総督
・機密保護法

第7章 アメリカの陥落
オフショア・ビジネスへの積極参加を決めたアメリカ
中南米ウォール街、マイアミ
・オフショアIBFの誕生
ワイオミング州デラウェア州

第8章 途上国からの莫大な資金流出
タックスヘイブンは貧しい国々をどのように痛みつけるか
・国際商業信用銀行の事件
アンゴラ
・二重課税

第9章 オフショアの斬新敵拡大
危機のルーツ
・逆進課税制度
・有限パートナーシップ法
・守秘法域

第10章 抵抗運動
オフショアのイデオロギーの戦士との戦い
・「租税競争」のウソ
・減税は脱税を減らすか
・オフショアの自己弁護

第11章 オフショアの暮らし
人間の要因
バハマ−ベス・クラールの場合
ケイマン諸島−「デビル」の証言
ジョージー−ジョン・クリステンの場合

第12章 怪物グリフィン
シティ・オブ・ロンドン・コーポレーション
テイラー師とグラスマンの調査
・起源
・シティ改革へ法案
・第2帝国プロジェクト

むすび われわれの文化を取り戻そう

訳者あとがき

で、読んだ感想。

なかなか読みづらい内容だった。
タックスヘイブンの悪事、その規模たるやすごいものであるというのは分かったのだが、その奥にある“市場最大の詐欺行為”“タックスへイブンの深い闇”がどのようなものであるかは、陰謀論の書籍のように単純に“悪者”を設定しているわけではない。
ゆえに明快さに欠ける。。
さらに各章の論の展開がストレートでないのでこの本全体が展開する論が俯瞰しずらいと私には思えた。

ここで書かれてあった内容を煎じ詰めてうまく説明する知識、解説力は私にはないが、自分なりに理解し、疑問を抱いたことを短く述べてみる。

タックスヘイブンは、企業、富裕層が使っているお金の“逃げ場”であり、その逃げ場としての用途は大きく2つある。
納税の義務からの逃げ場
・金融規制からの逃げ場
・顧客の情報を外部に漏らさない

◆事業を行う土地で利益を上げていながらも、タックスヘイブンを経由することで納税を逃れることは、結果的には事業を行う国でのインフラなどを利用しながら、利益だけを抜いていくという行為となる。利益を事業を行っている国、自治体に還元していない、ということ。
この部分が帯にあった“タックスヘイブンによって、途上国は毎年1兆ドルの資金を失っている”ということにつながるのだろう。

◆金融規制について。この本で著者は、第4章で“オフショアと正反対のもの 金融資本に対する戦いとケインズ”と題して、ものすごく大雑把にいえば、経済の健全な発展はある程度の管理体制におくことが必要であると主張している。

◆顧客情報を秘密にすることはマネーロンダリングに使われるということに直結する。もろもろの悪事に使われるとということが書かれてある。

で、読んだ感想。
実は読んでいて腑に落ちないことがかなりあった。

タックスヘイブンの存在が、贈賄、犯罪、麻薬、武器、人身売買などのアングラマネーのマネーロンダリングとしての機能を果てしていることは犯罪行為であるのだから、許されることではない。

ただ、気になったのは税というものについて。この本はそのあり方の是非について解説することなしに、タックスヘイブンということで単純に悪ときめつけて論を進めているように思えた。

もちろん、きちんと納税しているほかの国民、企業からすると“ズル”をしていることになるわけで、そのこと自体は大いに問題があることは認めるにしても。

税制度、体系、税に対する観念は国家ごとに違っている。この本ではそのことについてはまったく述べられていない。

私はこの本を読んでいた、そもそも、税というものの意義は何になるのか、さらには国家とはということについて考えさせられてしまった。

ちなみにウィキペディアには税の機能・効果として
◆公共サービスの費用調達機能
所得の再分配機能
◆経済への阻害効果
◆景気の調整機能
の4つがあげられていた。


もう一度書くと、
タックスヘイブンの規模が大きいこと、
金融規制のないということで、極端な方向にぶれやすく現在の国際経済体制に大きな影響を与えかねない存在となっている、
そのことはわかった。

ただ、それなら帯の部分を読むだけで分かることだ。
その先を知りたかったのだが、どうもピンと来なかった。

なかなか引っかかるところのあった本だった。

この本を読んで、税、国家についての本を読んでみたいと思った。あと、国家、中央銀行が得る貨幣発行益、シニョリッジについて。
貨幣を発行することで国家、中央銀行は税収とは別に利益を得ているのだ。
当たり前のことだが、意外に語られていないことである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E8%B2%A8%E7%99%BA%E8%A1%8C%E7%9B%8A

この文、あまりに錯綜しているので、折をみて随時更新していくことにする。
この本を読んだ違和感をうまく書けない力不足を感じた。