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古賀茂明「官僚の責任」

書籍

官僚の責任 (PHP新書)

官僚の責任 (PHP新書)

改革派官僚だった古賀茂明の書いた本。
この人の本を読んだのは初めて。
有名な人だと思うが、ウィキペディアのプロフィールが簡潔で分かりやすかった。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E8%B3%80%E8%8C%82%E6%98%8E


目次は以下の通り。

                                                                                                • -

はじめに
第1章 「政治主導」が招いた未曾有の危機
はじまった日本崩壊のカウントダウン
テレビドラマ程度の対応策すら実行できなかった政府
震災に対する危機感を上回った政権延命への思い
東電に逆らえない経産省
被災地より大臣の想定問答集が大事
仇になった「総理主導」
責任逃れに収支した官僚たち
増税の果てにあるものは……
餓死者や凍死者が出てもおかしくない

第2章 官僚たちよ、いいかげんにしろ
発送電の分離は十五年前からの課題だった
原発事故の一因は経産省の不作為にあり
なぜ「5.7メートルで大丈夫」と決めたのか
「官僚=優秀」はとんでもない迷信
天下りはなぜ悪なのか
国民に気付かせないよう、こっそりやればいい
「等」に隠された目論見
民間に「押し付け」を強要できる仕組み
権限争議という無益な争い
通産省と郵政省がドブに棄てた2700億円
塩漬けにされる国の資産
海外インフラビジネスの危うさ
利益は出なくても利権は生まれる
発覚した裏金づくり
国家公務員法改正への挑戦
「これは革命だよ」
葬られた改革案
天下り禁止」は夢のまた夢
財務省に妥協せざるをえなかった理由
民主党は官僚を使いこなせなかった
能力がないからやる気だけが空回り
民主党はウソつきではなく、たんなる勉強不足
長妻厚労大臣の不運
事業仕分けのまやかし

第3章 官僚はなぜ堕落するのか
改革派から守旧派へ転じた経産省
規則を守ることが使命という「気分」
自分たちで自分を査定するシステム
霞ヶ関は人材の墓場
官僚になりたい人の動機
必ずしも高い志は抱いていなくても……
問題は入り口よりその後
「国のため」ではなく「省のため」
利権拡大が「目に見える成果」
ほめられるのがお好き
不夜城」と呼ばれるほんとうの理由
坪単価5000万円、充実しすぎの身分保障

第4章 待ったなしの公務員制度改革
増税しなければ国は破綻するという脅し
官僚一人のリストラで失業者5人が救われる
国民のために働かざるを得ない構造をつくれ
年功序列による身分保障の廃止
できなかったら降格やクビ
上さえ空いたら働く若手は必ずいる
若いうちから仕事の醍醐味を味あわせれば……
外部からの人材採用が不可欠な理由
官民の移動を自由にする開店ドア方式
Jリーグ方式を導入して天下りをトライアルの場に
事務次官も廃止せよ
縦割りから横割りへの意識改革

第5章 バラマキはやめ、増税ではなく成長に命を賭けよ
ちょっとかわいそうな人は救わない
年金支給は80歳から?
ほんとうに守るべき人のために
国境を高くすることが農業保護ではない
無駄な支援が企業の自助努力を阻んでいる
中小企業支援は官僚のアリバイづくり
某大手自動車メーカーが国を滅ぼす?
世界一の製品は世界一高くても売れる
「汗水=美徳」は世界の非常識
生き残るのは「国籍」を棄てた企業
官僚は外国企業の前で土下座せよ
日本人が英語をしゃべれないのは官僚のせい
国家の意思があればエネルギー政策は変えられる
国民投票脱原発

おわりに
あとがきを書き終えたあとで

                                                                                                • -


で、読んだ感想メモ。

ここに書かれたことは、大げさな言い方になるかもしれないが「現状の官僚制度に疑問をいだくひとりの官僚が、国民に向けて書いたメッセージ」といってよいと思えた。
その趣旨において明快でわかりやすく、かつポイントを捉えている本だと思う。
内幕暴露的な本と私は読まなかった。
官僚の内幕についての言葉は、あくまでも問題提起とその分析というスタンスで書かれていると私は思った。
感情的には書かれていない。
問題をいくつも連ねていくことで、組織全体のもつ問題が浮かぶ上がるようになっている。
ただそれは、日本人組織のもつメンタリティーの問題点も多くあったような気もするが……

官僚批判という点では、数日前によんだ「資産フライト」の山田順と同じスタンスだが、書き手のレベルが違うという感じだ。
官僚経験があるということももちろんあるが、
問題点の捉え方、その分析、伝える能力が、格段に違う。

山田順の場合はジャーナリスト、マスコミ人的な、人の興味を引く“つかみ”はいいのだが、問題の全体像をつかむ能力、その後の論の進め方に力不足な点があり、結果、自身の見識の浅さを示す竜頭蛇尾的なものになっているが、こちらはそんなことはなく、この程度の本では揺らぎなく論旨を展開している。自分の都合のいいように進める、こじつけめいた論理展開はない。
両者の書き手としての力量が、あからさまにわかってしまった。

新書なので、わかりやすく書かれ、細かい部分まで拘泥せず、全体像を示すものとなっているが、この人ならその根拠となる細かいデータを提供することも求められればできるのではないだろうか。

問題提起、その分析をした上での提案もここで積極的にしている。
中には思いつき的なものもあるような気もしたが、著者はまず仮説を立ててから提案を挙げるのが当然、と語っているので、それなりのイメージはあるのだと思う。
そして、まずは提案しなければ何も始まらないのだから、ともかく出した、ということもあるのかもしれない。

ほかの著作も読んでみることにする。
読んでいて気持ちのいい文章だ。
頭のいい人だと思った。