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映像、書物、音楽などについての感想

角川春樹 石丸元章「生涯不良 師弟対談」

生涯不良

生涯不良

石丸元章「KAMIKAZE神風」を読んだ勢いで、この本も読んでみた。
↓「KAMIKAZE神風」を読んだ感想メモ。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20121006/1349545741
KAMIKAZE神風 (文春文庫)

KAMIKAZE神風 (文春文庫)

私は知らなかったが、石丸氏は角川春樹氏の弟子とのことで、この本は“師弟対談”となっている。この本を書いているのは石丸氏。
2009年11月発行。
まず、東日本大震災の前に発行された本であることを念のために書いておく。

この本、目次の後の本文が始まるページの扉にこんな言葉が書かれている。

角川春樹を語ることは、宇宙を語ることに他ならない――”

そして「まえがき(ご挨拶にかえて)」はこう始まる。

“わが師・角川春樹先生が提唱し推進する、新しい文藝運動「魂の一行詩」の門下生となって数年の時を経た。それとほぼ前後して、自分はまた、春樹先生が編まれた「生涯不良」という人生哲学の弟子となっている。押しかけ弟子である。
弟子になってから、師・角川春樹を間近に仰ぎはじめると、実にたくさんの不思議が見えてきた。といっても、師の不思議ではない。師は常に明快なのだ。師を取り巻く世間が、不思議なのである”

こんな感じで始まった対談、春樹氏が語ったことは以下の目次のように整理されている。

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まえがき
第1章 角川春樹の精神世界
現代の偽スピリチュアルブームを斬る
本物の「予言」とはなにか?
俺が地震を止めた日−2005年7月7日、世界は二つに分裂した
魔族との戦い

第2章 人生のすべては「遊び」なのだ
UFOと終戦−1945年の晩夏光
牢獄という生き地獄
ドラッグとは……
「死」を軽々と超えてみせよう
海底の戦艦大和に導かれて
モンゴルの大地に雪を降らす
肉体と魂。あるいは武道と詩について
映画とは商品である
映画『笑う警官』を見て
父・角川源義を超えて

第3章 魂の一行詩
脳・宇宙・一行詩
現代物理学と角川春樹
宇宙の根源
異界・死者・交信
写生=写実ではない/子規・虚子の罪
すべての「壇」をぶっ壊す
映画と一行詩
本当の「自然体」
初めての散文詩
思想としての一行詩

第四章 日本人よ、覚醒せよ!
「神と遊ぶ」ということ
神事と資本主義概論
日本の神道
宗教の時代は終わった。
人間はあらゆるものから自由でなければならない

最終章 生涯不良

あとがき

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角川春樹氏の発言といえば、面白いが突っ込みどころ満載の内容で有名である。
ウィキペディアでも“角川春樹伝説”と書かれているが、ここでは本人が以下のことを語っている。

・2005年に関東・東海で起きるはずだった大地震を止めた。
・3歳の終戦の年にUFOを見た。
・映画のロケでモンゴルを訪れた際には現地で数十年ぶりの雪を降らせた
・海に沈んだ戦艦大和を勘で発見した
・知人のがんを治した
などなど

実はこの対談、読み物として難がある。
何が問題かというと、石丸氏が一貫して春樹氏の語る言葉を拝聴するというスタンスになっていることである。
ともかく、石丸氏は春樹氏の言葉をありがたくいただくだけである。
本人は春樹氏に心酔しているからいいのかもしれないが、読んでいるこっちはたまらない。
独善的な人間が好き勝手なことを放言することを弟子が「ははーっ」と拝聴しているのにつき合わされるのだから。

これがほかのインタビュアー、例えば吉田豪氏であれば、突っ込みも入れつつも春樹氏の魅力を引き出しているだろう。読んでいて笑いもするが、春樹氏が類のない人間ということは読む者に伝わってくる。
石丸氏はあまりに対談の調子が硬すぎる。そして師匠の言葉を鵜呑みにしすぎる。弟子であるのだから批評的になることは難しいにしても、宗教談話ではないのだ。
突っ込みに対する春樹氏の反応で対話は面白くなる可能性が生まれるのだと思う。

この本で、春樹氏は“遊ぶ心”を持つことと“不良”であることを“愛弟子”の石丸氏に強く伝えている。

一方の石丸氏は大麻の合法化を目指し(?)自民党に入党したことを語り、春樹氏には迷える若者を救う宗教家になってほしいと強く訴えている。彼の真摯な部分は伝わるのだが……

この本を読んだ私は、石丸氏が“自由”を求めながら、何かに依存してしまう傾向があること。実は真面目な人間であり、“不良”というよりは“良”に属してしまう人間であることを感じた。
春樹氏は、そんな石丸氏に“優”でも“修”でも“可”でも“不可”でもいい。だが、“良”にはなるなと強く命じている。
なかなか興味深い発言だと思った。春樹氏も石丸氏を“不良”たらんとする“良”の人間と思ったのだろうか。

一方的な放言集なので、対談での2人のやりとりの面白さを期待して読む本ではないと思う。
とはいえ、春樹氏の語る“情報”は面白かった。

読んで面白かったこと
◆2005年の7月7日に、春樹氏は自身の所有する明日香宮で護摩を焚き、一晩中祈願したことで7月17日に起きるはずだった関東・東海地区での大地震を止めたということを語っていたが、そのときに長渕剛が同席していたそうだ。

◆春樹氏は、自分の風貌が柄谷行人と似ていることを自覚している。
その部分で石丸氏が唯一ここで面白いことを言っている。そしてそのあと興味深いことを春樹氏は語る。

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春樹 柄谷行人のことは、俺も認めている。しかし、柄谷氏にないものがある。何かわかるか?
元章 ……おカネですか?
春樹 面白いけど、それは違うだろう。暴力だ。暴力を否定してしまったら、不良は成り立たない。最後に意味を持つのは暴力なんだ。暴力を否定してしまうと、守ることも戦うこともできない。柄谷氏と俺は「暴力」を通して、正反対に位置している人間なんだろうなと思う。

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狙ったのかどうかわからないが、春樹氏に「俺がもっていて柄谷氏にないものは?」と問われ、「お金ですか」と石丸氏が答えたボケは笑えた。

◆ともかく刑務所生活が春樹氏にとっては地獄だったそうだ。人生の中で最も辛かったそうだ。辛かった理由はここでは語られていない。刑務所でいじめられていたそうだが、そのことだろうかと初めは思ったが、むしろ自由を奪われたことが辛かったのかもしれない。

角川春樹氏の提唱する新しい俳句運動“魂の一行詩”運動については興味深く思った。また、彼の書いた散文詩が2編掲載されているが、引かれるものがあった。時間をかけてじっくり読んでみたいと思わせるいい詩だと思った。

◆春樹氏の師匠は武道家の小泉大志氏、能力者として評価しているのは白石慈恵氏、成瀬雅春氏とのことである。春樹氏が地震を止めたときには白石氏、成瀬氏が同席し、さらに亡き小泉大志氏が別の世界から力添えをしてくれたとのことだ。