石井克人監督、妻夫木聡主演の映画「スマグラー おまえの未来を運べ」
以下、見た後の雑なメモです。
石井監督としては「鮫肌男と桃尻女」に似たテイストの作品であるが、個人的には今回の「スマグラー〜」の方が、断然面白く見れた。
また章立てになっている構成、けれんみのある映像演出からタランティーノを連想した。
確か石井監督本人もファンと公言し、「キル・ビル Vol.1」で制作にも参加していたと思う。
ただ、後で読んだ石井監督へのインタビューによると映画の4部構成は原作コミックにすでにあったとのことだ。
この映画、バイオレンス・アクション・エンターテインメントということになるのだろうか。
スローモーションの多用。口から出るよだれ、血、嘔吐物が宙を舞う映画。
そのあたりの映像の多用でこの映画がコミック的な誇張のある映画ということを認識させるものになっている。
コミックの場合ストーリーは荒唐無稽といえる設定でも、デフォルメされた絵柄から読者をフィクションに引き込むことができるが、実写となるとそのままでは見てるものに違和感を抱かせるものになってしまう可能性がある。
そういう点からすると、けれん味のある誇張した映像演出を得意とする石井監督は、コミックが読む者に与える“感触”を実写映画化に置き換えることに向いている映像作家なのではないかと見ながら改めて思った。
リアルな映像演出だと、設定、展開などなどで違和感が生じてしまうはずだ。
主人公の周囲にいるのは奇人図鑑さながらの、人間離れした奴らばかりで見ていて楽しい。まともなのは主人公だけである。
・我修院達也のあいかわらずの妙な存在感・演技。
・安藤政信が人間離れした身体能力を持つ中国人の殺し屋を熱演している。一時期重病人のように思えたのが嘘のようだ。
・高嶋兄の怪演。拷問描写の執拗さ。初めのうちは高嶋兄と気付かなかった。
・短髪、一重まぶたの永瀬正敏は中年時代の志賀勝かと思った。そう思ったのは俺だけ?
ちなみに初日舞台挨拶で石井監督は「前半は面白いです」と語っていた。どういう意味だろう。
後半の拷問シーンはそれを描くことにちょっと固執しすぎてバランスを逸した気も、私はした。
女性観客の場合だとこれは好みが分かれるところだろう。
妻夫木のパンパンに腫れ上がった顔はインパクトあったが……
個人的にはあまりストーリー展開、テーマがどうこうという作品ではないと思うので、非常に面白く見れたという感じだ。
私の一番好きな石井監督作は「PARTY7」なので。そしてタランティーノ映画のバカバカしさも大好きだから。
この監督、独特の笑えるところがあるのが好きです。
とりとめもなくバカバカしい(魅力という意味で)ものを楽しめるかどうか、
それが見る人の評価を分ける作品という気もする。
シーンの切り替えについてフェイドアウトが多かったのが、今どきの映画としては新鮮だった。