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映像、書物、音楽などについての感想

トニー・ケイ監督、エイドリアン・ブロディ主演の映画「デタッチメント」

以前、「アメリカン・ヒストリーX」
という映画を見て、ものすごく心を奪われた。

アメリカン・ヒストリーX [DVD]

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そしてこの映画を監督したトニー・ケイという人がずっと気になっていた。
東京国際映画祭でこの監督の新作が上映されると知り見ることにした。
自分でブログにこんなメモをつけていた。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20110926/1317001654
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20110910/1315672578

で、見たのだが、こちらは「アメリカン・ヒストリーX」ほどの大作という感じはないが、
作品の中で描かれる、“世の中にある数え切れないほどの失望(絶望)とかすかに垣間見える希望”という内容は両者に通じており見ていてまたもや心を奪われた。

この映画で描かれているテーマは、
タイトル通りに、教育現場を舞台にした人間関係におけるdetachment(=分断された、孤立化した状況)というものではないかと思えた。

手持ちカメラで撮ったようなラフな映像演出(とはいえ映像の解像度は高い)で臨時高校教師の行動を描き、
アメリカの教育現場(そしてアメリカの市民社会)の荒廃が語られていく。

「アメリカン〜」と違い、かっちりと作られたドラマの上を物語が進行する作品ではなく、臨時教師の語りを間に挟みながら、エピソードを断片的に提示、孤独な人々の感情の動きを提示していくような構成となっている。

断片的に並行して描かれる主人公をめぐるいくつかのストーリーで、大きなものは以下の3つだったような気がする。
・英文学の臨時教員として公立高校に赴任したヘンリー・バース(エイドリアン・ブロディ)。生徒や学校とは距離を置きながら仕事を進めていこうとするが、その言葉とは裏腹に、抑圧され分断された環境にいる生徒をいい方向に導きたいという思いが行動に現れてくる。
・その一方、バースは家もなく売春でその日暮らしをしている少女と知り合い、その少女成り行き上引き取り、同居生活を始めることになる。
・また、バースは養護施設で暮らす祖父の面倒をみている。バースは幼い頃、祖父、母と3人で暮らしていたとき、母を薬の過剰摂取で失っている。そして祖父と母の関係に、祖父の精神疾患に基づく何かがあったというトラウマを持っている。だが、その一方で、母から守られ深い愛を受けた記憶を強く抱いている。

バースは世の中に無関心に生きようとするが、弱者である子供たちにいつの間にか手を差し伸べていく。そして多分それは、幼い頃、母から守られたという記憶があるからなのだろう、思った。

結論としては、バースの行動にかかわらず、ほとんどの夢や希望は失われる。だが、ささやかな希望らしきものは残る。
とはいえ、ラストは非常に荒涼としたイメージで終わる。
このあたりは「アメリカン・ヒストリーX」に通じるものでもあった。
エンディング曲はボブ・ディランの「マイ・バック・ペイジズ」。

ただ、アメリカの教育の現場の実際を知らない私としてはどのあたりが誇張でどのあたりがリアリティのあるものかは正直判別がつかなかった。

いわゆるハリウッド的な作品ではないが、とてもいい映画だった。
解説的なものがほとんどなく、見た感想のみからなる文章なので、記憶違い、勘違いなどがあったらすみません。
東京国際のサイトでは主演の役名がヘンリー・バルトとなっていたが、実際はヘンリー・バースだったと記憶するのだが。
劇中「エスは発音しないんだ」とか言っていた。
IMDBだとHenry Barthesという役名。