今さらながら、ルー・リードの追悼特集号を読んでみた
「ユリイカ2012年5月号 特集=テレビドラマの脚本家たち」を読んだ際に、ほかの号での特集をチェックしてみると2014年1月号でルー・リードの追悼特集をしていることを知った。
どんなものかと思い、読んでみた。
どのような執筆者がいるかを以下にコピペしておく。
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◆ユリイカ 2014年1月号 特集=ルー・リード
【Rock 'n' Roll Animal】
Like A OId Husband, I Would Like To Be./大江慎也
ルー・リードのこと/Phew
人工島に鳴り響いた純粋な詩の魂/町田康
【Sametová revoluce】
千の夢を生きた男の生涯/大鷹俊一
ビロードのノイズ ルー・リードとヴェルヴェット・アンダーグラウンド/鈴木創士
「ウォール・オブ・サウンド」としてのヴェルヴェット・アンダーグラウンド/土屋誠一
【The Poetic Principle】
日常の生き様/田中泯 聞き手=編集部
呪いを聴いてきた/伊藤比呂美
Rou Leed/山崎春美
愛の人工衛星/福田和也
【America! America!】
ボブ・ディランとルー・リード/大和田俊之
ルージュの血と肉でできたリース ルー・リードの『ベルリン』/椹木野衣
アンビヴァレンスを撃ちながら ロックの両面装置を生きた男/中野利樹(TOSH NAKANO)
この、魔法のような瞬間/石黒隆之
具象と抽象の間で/小峰正治
【Session】
メタル・マシーン・ミュージック 演奏と録音がせめぎあう場/長嶌寛幸 金子智太郎
【The Door】
Sick of Goodby's/ホンマタカシ
ワイルドサイドから、遠く離れた街の片隅で/豊田道倫
扉の先で/七尾旅人
「肉声」の人/山川冬樹
荒野で鳴り響く/大谷ノブ彦
【New York】
「映画」と拮抗したルー・リードの多面性/上原輝樹
黒ずくめの男、あるいは大鴉/青野賢一
変容と乱交 ニューヨークのクィアカルチャーをめぐって/ミヤギフトシ
背後の世界、あるいはあらかじめ喪われているものの彼方ヘ ルー・リードとデルモア・シュウォーツ /高村峰生
二〇世紀のルー・リードから一九世紀末のマラルメへ / 黒木朋興
【Walk on the...】
ルー・リード・クロニクル/岡村詩野
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冒頭の大江慎也の原稿は、何を言わんとしているのわからない妙な文章。相変わらずである。
福田和也にはルー・リードを語るに足る知識がないということはわかった。
岡村詩野のルー・リード・クロニクルは彼の生涯をきっちりと追った充実した読み物だった。
ちなみにこの特集、売り物は田中泯のインタビューのようだった。
表紙にも一番大きく彼の名前がある。
なんでも、ルー・リードが死去した後、彼とローリー・アンダーソンが暮らしていた家で田中が追悼の踊りを披露したとのことだ。
そのいきさつや彼との交流についてのインタビューだった。
ルー・リードと知り合ったのはジョン・ケイルとの交流から生まれたとのこと。
ルー・リードの写真の前で「オー・ジム」を流しながら踊ったそうだ。
なんか色々語っていたが、個人的にはあまりピンとこなかった。
結局、読んで印象に残ったのはルー・リードの声に関して書かれたものだった。
P57
私はその頃、無名の歌手であったが、観客だけではなく歌手にとってもルー・リードの歌い方は魅力的でどの歌手もルー・リードのような歌い方をしたいと思っている。どんな歌い方かというと、やる気なさそうな、だるそうな感じで歌っているのだけど、むっさ迫ってくる。と同時に、むっさ引っ張ってくる。みたいな歌い方であり、かつ、低い陰気な調子のなかに高い陽気な調子が混ざっているみたいな歌い方である。
しかしこれはルー・リードだけができる、ルー・リードただひとりに許された歌い方であり、一般の歌手があんな風に歌ってみたい、という欲望に負け、うっかり真似をするとどえらい目に遭う。現に国内外で多くの歌手がルー・リードの歌い方を真似、悲惨な目に遭って没落していくのを私は何度も目にした。
私はそれを知っていたので真似をしなかった。勉強をすればルー・リードのような詩を書けるようにはなるかも知れないが、ルー・リードのようには絶対に歌えぬのである。
Phewは以下のように書いている。
P55
少し鼻にかかった無駄な呼気のない小さくても通る低い声、平坦なうたい方、揺れながら伸び縮みするリズム、ノンピッチ、かすかで自然なビブラート、ルー・リードのうたは、聴く人の耳にダイレクトに届く。息漏れのないクリアな発声と控えめなリバーブのせいも勿論ある。でも、それだけでは、説明できない何かがある。方向や距離の感覚を混乱させてしまう何かが、彼の声にはずっとあった。いつでもそこ・ここにある声。
わたしはルー・リードのうたが好きだ。曲はシンプルだけど、そのうたは誰にもまねできない。彼の音楽からもミュージシャンとしての在り方からも強い影響を受けた。けれど、どんな風にかを具体的に語るのは難しい。
ルー・リードは一時期バイノーラルという立体的聴覚を得られる録音方法でレコードを出していたときがある。
↓ウィキペディアの「バイノーラル録音」の説明
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%AB%E9%8C%B2%E9%9F%B3
上記の文を読んで、もしかすると彼は自分の声を聴き手にダイレクトに届けることを考え、バイノーラル録音を考えたのかもしれない、などと一瞬思ってしまったりした。
以前、キース・ジャレットに関して自分では把握することのできないミュージシャンと書いたが、ルー・リードも自分の中でいま一つ“わからない”アーティストだった。
ただ、それはこの場合、音楽性というよりは芸風、キャラ的な部分でだった。
作品の志向、クオリティのばらつきが甚だしい。
彼のアルバムはメタリカとの共作『ルル - Lulu』を除けば、すべてのスタジオ・アルバムは持っていた。
彼のオリジナル・アルバム全てを持っていた人というのは意外に少ないのではないかと思う。
ファンだったのだ。
高価だった自選詩集『ニューヨーク・ストーリー―ルー・リード詩集』も持っていた。
原題は『Between Thought and Expression』。そんな言葉にかっこよさを感じていたのかもしれない。
同タイトルの自選3枚組アルバムもよく聴いた。
かなり好きなアーティストだったのだが、いつのまにか次第に遠い存在になっていた。
昨年亡くなった際も、感慨深いものはあったが、『ソングス・フォー・ドレラ』以降の作品には死の匂いがするものが多かった印象もあり、意外にショックはなかったし、特に彼の作品を聴き直そうという気にはならなかった。
今回この特集記事を読んで、彼のアルバムを通して聴いてみた。
アリスタル時代の迷走期にあったアルバムには正直、聴き通すのがきついものもあったが、意外に面白いものもあった。
『ストリート・ハッスル』はそう悪くない。
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全作品を俯瞰すると、先に述べたようにクオリティも、音楽的方向性もバラバラという印象だ。
ジャケットデザインの趣味はあまりよくないと思う。
ちなみにロッキング・オンの追悼特集の見出しは
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背徳のロックンローラー、
永遠のアウトサイダー
ルー・リードに捧ぐ
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rockin'on (ロッキング・オン) 2014年 01月号 [雑誌]
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これに“ロック詩人”という呼称を加えれば、ルー・リードの生涯のパブリック・イメージは完成なのかもしれないが、えっ、結局そんなもんなの、とちょっと寂しくなる。
ワイルド・サイドを歩け! か……
鳥井賀句ですね……
この見出しにあるような一般的イメージを抜き取って彼のことを考えると、
結局、ルー・リードは“声”の魅力に尽きるということなのかもしれない。
ユリイカの追悼特集を読んでそんなことを思った。
ちなみに私はルー・リードのアルバムでは一番好きなのが『ライブ・イン・イタリー』だ。
LP、そしてウォークマンで聴いた回数を合わせれば今まで生きてきたうちで、聴いたアルバム回数ベスト10には間違いなく入るだろう。CDよりはアナログで聴いた回数のほうが多いと思う。
シンプルにして豪快でダイナミックなロックバンドのカタルシスがあるライブ録音の名盤だ。
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結局、この4人のバンド時代が一番好きだ。
だが、“背徳のロックンローラー”というサウンドではない。
このアルバムが一番好きな私は、正統派のルー・リードのファンではないのだろう。
ルー・リードのCDは『ライブ・イン・イタリー』以外もう手元にない(もちろんデータは残しました)。
調べてみるとレコードコレクターズは2014年1月号で追悼特集を行い、河出書房は「追悼ルー・リード (文藝別冊/KAWADE夢ムック)」なるものも出していた。
図書館で借りて読んでみて、思うことあればまた感想メモを書き残すことにする。
2014.4.27追記
そういえば
大栄出版から出た
ピーター・ドゲット「ルー・リード ワイルド・サイドを歩け」も持っていた。
ただ、もう手元にはなく、内容については全く覚えていない。
結構、感銘を受けたような気もするのだが……
- 作者: ピータードゲット,Peter Doggett,奥田祐士
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