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植草一秀「日本の独立 主権者国民と『米・官・業・政・電』利権複合体の死闘」01

500ページを超えるものなので読むことに多少躊躇したが、
読んでみると、平易な文章で、繰り返して基本的な主張を書いてくれているので、
容易に電車の中で読み進め、理解することができた。

目次は以下の通り

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(1)6.2クーデターの真実
第1章 信なくば立たず
第2章 対米隷属派による政権乗っ取り
第3章 日本の支配者は誰か
第4章 小泉竹中政治への回帰

(2)小泉政治の大罪
第5章 日本経済の破壊
第6章 官僚利権の温存
第7章 政治権力と大資本の癒着
第8章 対米隷属政治
第9章 権力の濫用と官邸独裁
第10章 平成の黒い霧(1)新生銀行上場認可
第11章 平成の黒い霧(2)りそな銀行の乗っ取り
第12章 平成の黒い霧(3)郵政米営化・郵政私物化
第13章 平成の黒い霧(4)「かんぽの宿」不正払い下げ未遂事件
第14章 平成の黒い霧(5)日本振興銀行設立の闇

(3)この国のかたち
第15章 大久保利通と官僚主権構造
第16章 米国による日本支配構造の系譜
第17章 対米隷属の父・吉田茂
第18章 CIAの対日工作
第19章 カネによる政治の支配

(4)菅直人政権の「逆コース」
第20章 政権交代に託された五つの課題
第21章 財政再建原理主義市場原理主義の毒
第22章 「最小不幸社会」政策化下の不幸放置
第23章 「抑止力」という名のプロパガンダ
第24章 官僚意識を変革する秘策

(5)主権者国民と悪徳ペンタゴンの死闘
第25章 小沢一郎氏の「政治とカネ」問題研究
第26章 前近代の警察・検察・裁判所制度
第27章 管直人小沢一郎の全面戦争
第28章 財界再編と日本のルネサンス

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著者が強く主張していることは“主権在民”である。
(著書のタイトルでは“主権者国民”となっているので以降、それに従い“国民主権”とする)
著者は政治についてこう語る。
P52「政治は国家の権力を握り、国民の生活を根底から左右するものである。
人類の歴史は、政治の権力を特定の個人、特定の家系から、国民が奪取する歴史でもあった。
現代民主主義国家の根本原則は、人類の多年にわたる闘争の結果、獲得されたものである。人類の多年にわたる努力と闘争の結果として獲得されたのが、民主主義制度の果実であることを十分に認識して政治を見つめなければならない。
しかし日本では主権者が国民であり、すべての政治権力の源泉が国民の意思にあることにかんする認識が不足してきた。
政治家を選ぶのも、政治家を育てるのも国民であることを忘れてはならない。」

この国民主権の主張は著書の根底にあるテーマとして何度も語られる。

WBSなどでの野村総研エコノミストというカタカナの肩書のイメージが強かったので、
読み始めたときは、プラグマティックなことが語られるものとばかり思っていた。
なので、著者の“理想”論が“熱い”といってもいいトーンで語られることに正直違和感を覚えた。
だが、読み進めているうちに、著者が、政治・経済に真摯な理想を抱いているということが自分なりに納得できるようになった。
この人は“学者”だったのか、と改めて認識した。

タイトルに「日本の独立 主権者国民と『米・官・業・政・電」利権複合体の死闘」とあるように
この本は
国民主権”とそれに対抗・抑圧しようとする既得権益勢力の歴史と構造を、
明治以降から捉え、第2次大戦後戦後、現在に至るまでの日本における“国民主権”がいかにまやかしのものであったかを
転換期となる時代をいくつかとりあげて語っているものである。

既得権益勢力として挙げられているのはアメリカ、官僚、大資本、そしてそれに加わる政治屋と大手マスコミである。
著者はそれをまとめて「悪徳ペンタゴン」と呼んでいる。
“グル”になって国民を欺き、抑圧、支配している「悪徳ペンタゴン」を告発、そしてあるべき道を探る、
というのが著者の主張だった。

この本の内容をざっくりと俯瞰してみたい。
歴史的に見ると著者の主張としては、

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明治維新は外圧があって生まれたものであり、
その後の日本の歴史は地政学的に英・露の対立構造からまずは読み取ることができる。
そして、現在の官僚の日本政治支配の源流となるものを作ったのが薩摩藩出身の大久保利通である。
大久保と対立する存在としては江藤新平がいた。
江藤は正義の実施と人民の権利擁護に力を注いだが、大久保により追い落とされ抹殺された。
結果、大久保による中央集権的で、人権意識が希薄で正義の欠落した明治政府が作られていった。
そのことが現在の官僚制度の悪しき慣習、気質の根源となっている。

第2次大戦後戦後、日本を統治したマッカーサーは理想を抱いていた。
マッカーサーは「アメリカがもう40代なのに日本はまだ12歳の少年、日本なら理想を実現する余地はまだある」と
さまざまな「自由の指令」を出し、日本国憲法作成に乗り出す。
だが、戦後、共産主義が台頭する中、
米国内で共産主義封じ込め計画が進むことで民主化の流れが逆行。
('47年のトルーマン・ドクトリンが大きな逆行の象徴である)
GHQ内部でも民主化を進める勢力と反共の逆コース勢力が反目するようになる。
そして逆行派が主流となり、民主化勢力は消える。
そんな中、日本では新憲法施行とともに社会党政権が誕生、その後の芦田内閣で民主化が進むかと思われたが、
“逆行派”と化したGHQ、その諜報組織G2暗躍で日本の民主化の流れは滞ることとなる。
その後、地政学上の対反共の重要ポイントとして日本はアメリカに重要視され、
サンフランシスコ講和条約での独立回復と同時に、
日米安保条約を締結させられ、現在に至るまでアメリカに従属する国家となっている。
そしてその対米従属を大きな流れを推し進めたのが吉田茂である。

また、戦後多発した下山事件松川事件三鷹事件などの怪事件は反共活動を進めていたGHQ・G2関与の可能性が高い。

この時代で特に注目すべきは
GHQによる戦犯釈放、旧日本軍参謀幹部あるいは731部隊などの戦後取り扱い、CIA(その支配下にある吉田茂正力松太郎)によるメディアコントロールの路線である。メディアによる国民のマインドコントロールは現在まで続いている。

米国で法律により戦後の情報公開が始まり、上記のことが明らかになってきている。

その後の日本の政治は、対米従属派の政権が続く。

だが、一部の、自主独立路線を歩もうとする政権はことごとくCIAなどによる暗躍などでつぶされている。
つぶされた政治家としては、対中自主外交、ウラン採掘について独自に動いた田中角栄がいる。

そして、
対米従属政策を推し進め、日本経済を崩壊させたのが小泉純一郎竹中平蔵である。

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とりあえず、ここまで。
簡単に書こうとしても長くなりますね。
続きは翌日に。
↓続く
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20111004/1317704738

日本の独立

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