見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

鈴木清順監督、沢田研二主演の映画「夢二」

10数年前にビデオで見たときは、どうにもピンと来なかった。
今回は、以前見たときと違い、ゆったりとした席でのんびりと見たせいか非常に楽しめた。
ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」に続く清順3部作の最終作などといわれているようだ。

物語がどうこうという話ではない。
おそらく田中陽造の脚本をむちゃくちゃにしたんだと思う。
いわゆる、ドラマ構成としての「何が、どうして、どうなる」的な映画ではまったくない。

登場する役者が魅力的だ。
ずっと顔を見せず、途中から顔を見せて登場する原田芳雄もいい。
長谷川和彦が大活躍しているのに驚いた。すっかり忘れていた。

沢田研二もいいのだが、軽くだらしない男ぶりが、もっとはまっていたらよかったのだが。
そこがちょっと残念。もっといい味出せたと思うのだが。

見ていて眠くなりつつも世界にどっぷり漬かっているのが心地よい映画。
軽くふわふわとただような映画。

ラスト、主人公がススキの野原で「僕は一体何を探していたんだろう」と独白して終わる。
見てたほうとしては、この映画一体何なんだよ、といいたくなるようなストーリーである。

ほんとに人を喰った映画だと思う。

でも、こういう映画があってもいいのだろう。
私は、映画にはドラマ的なものを求めるほうだが、この作品については
これはこれで面白いなと思った。

10数年経ってから面白さがわかった。
いや、
“わかった”というより、面白く見ることができた。

3部作のニュープリント版が1月中旬に公開予定とのこと。

夢二 デラックス版 [DVD]

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