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ジュリアン・コープ「JAPROCKSAMPLER ジャップロック・サンプラー 」04

ジュリアン・コープ「JAPROCKSAMPLER ジャップロック・サンプラー 」03
からの読書メモの続き
第2章
6.フラワー トラベリン バンド
7.裸のラリーズ
8.スピード、グルー&シンキ

の途中まで読んだ。
このあたりはこの本の読みどころのようだ。
3つのバンドをそれぞれ独立したチャプターを立てて紹介している。

著者の文章も力が入ってきている。同時に妄想も増大。
そして、非常に面白い。
フラワーズ、フラワー・トラベリン・バンドを仕込んで
マネジャー・プロデューサーとして成功を求めて不屈の闘志でシーンに挑む内田裕也
しかし決定的に負け続ける彼は、まるで神話に登場する英雄のような筆致で描かれている。
とまで言ったら言い過ぎか。

実はフラワーズ、フラワー・トラベリン・バンドについてはきちんと聴いたことがない。
これを機会に聴いてみたいと思った。

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↓以下、後で聞いてみた感想
『SATORI』の感想メモ

『ANYWHERE』の感想メモ

『メイド・イン・ジャパン』の感想メモ

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裸のラリーズの魅力について書かれた文章は、
“文学的”ではあるが、その魅力の本質をとらえたものとして、かなりの共感を抱いた。
ラリーズを体験したことのない人は、この文章を読んだら聴いてみたくなるのだろうか。
なぜか恐山と水谷を妄想で結びつけようとしているのが笑えるが。多分、関係ないと思う。

スピード、グルー&シンキについては実はまったく知らなかった。
この文章を読んで、非常に聴いてみたくなった。

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↓以下、後で聴いてみた感想
『イブ 前夜』の感想メモ

『スピード・グルー&シンキ』の感想メモ

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とりあえず、思ったこと
フラワーズの『CHALLENGE!』とシガー・ロスの『残響』のジャケットって、
オールヌードと草原という点でちょっと似てる。
偶然か、それとも意識してなのか。
まあ、偶然だろう……

今さらながら、内田裕也の独特のセンスのよさを痛感した。
すっ裸でオートバイにまたがって『ANYWHERE(どこかへ、どこへでも、どこだっていい!)』というのは
ジュリアン・コープが絶賛したように、素晴らしい。
BLANKEY JET CITYの曲にもそんな歌詞があったような気がする。

でも、並べてみたら以下の写真全部裸ですね。

CHALLENGE!(紙ジャケット仕様)

CHALLENGE!(紙ジャケット仕様)

残響

残響

エニウェア

エニウェア

メモが見つかったので書いておく。

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P169 評論家でプロデューサーでもあった立川直樹のことを「仏教詩人でソングライターでもある立川直樹」と紹介。例によって脚注の突っ込みあり。
P168 「インディ・レーベルの大手、テイチク・レコード」とテイチクをインディと扱っている。その後コロンビアもインディと書いている。またも脚注で突っ込みあり。ここまでくるとボケと突っ込みで、微笑ましく読める。
P172 成田闘争の際に行われた“幻野祭”のトリが19歳の灰野敬二がギターを担当するロスト・アラーフというバンドで、その前のアクトを勤めた頭脳警察とうってかわった灰野のパフォーマンスと例の轟音ギターで観客が怒り、騒乱状態となった。
「19歳のシンガー、灰野敬二は、至福の表情を浮かべる観客に、おまえたちを殺したいと告げ、マイクに向かって卑猥な言葉を絶叫しはじめた。フェスティバルは一気に紛糾した。抗議者、農民、こわもての「ヤクザ」「盆踊り」のダンサー、主催者、そしてユニオンの人間がPAから噴出する下劣な雑音を止めるべく、その発生源である男たちをいっせいに抹殺しようとしはじめたからだ。フェスティバルは田圃で開かれていたため、足元の巨大な石が、いきなり砲弾の代用品となって、ロスト・アラーフに雨あられと降り注ぎ、彼らはあわてて隠れ場所を探しまわった。フェスティバルは一気に暴力に包まれ、何事もなかった過去3日間、会場の周辺をただうろうろするだけだった警官たちは、やっとのことでヒッピー連中の頭をかち割る口実を得た」
P178 フラワー・トラベリン・バンド、そして内田裕也への賛辞がすごい。
「そして個々のレコードのコンセプトにこだわり抜く彼らのマネージャー、内田裕也のスタンスと合体させると、山積みにされた証拠の向こう側から、日本一明るいロックンロールの太陽が表われてくる。〜そう、フラワー・トラヴェリング・バンドは真の意味でこの世のものとは思えないバンドであり、音楽的な空間を広大な宇宙感覚で捉えた、ヘヴィ・ロックのカンとでも言うべき、驚異的に濃厚なアンサンブルだったのである。しかもそうしたすべてを実現したのは、バンド内にいたひとりきりの幻視者ではなく、師であり、煽動者であり、マネージャーであり、常駐のグルジェフでもあった内田裕也に尻を叩かれた4人のミュージシャン全員のハードワークだった。彼はアルバムを10枚つくってもまだ余るほどのアイデアとプロジェクトを、バンドに提供しつづけた」
以降、展開される“内田裕也物語”が素晴らしい。

P236 スピード、グルー&シンキについては、以下の文を読むと非常に聴きたくなる。
ジョーイはモウリ・スタジオに巨大なムーグ・シンセサイザーを運び入れ、彼としてもとりわけけた外れな作品を「書き」はじめた。「ラン、プラネッツ、ライフ、ムーン」と題された、アルバムの1面にわたる実験的なソロ・シンセサイザー・メドレーである。タンジェリン・ドリームモーグ大作《ツァイト》のようなスタイルで、20分にわたり、気象の形成を思わせる原始的なシンセ・サウンドはとりとめもなく展開させた〜」
この著作によると、フィリピンに帰国したジョーイ・スミス(ドラムとボーカルを担当していた)はその後、母国でスタジアム級のロックバンドを率いて30年以上活躍したということだ。
でも「ラン、プラネッツ、ライフ、ムーン」て
ボアダムスの「ビジョン、クリエイション、ニューサン」に語呂が似てる。
これも偶然なんだろうな。
まあ、『宇宙 日本 世田谷』ってのもあるし。
ちょっと違うか……。

↓に続く。
ジュリアン・コープ「JAPROCKSAMPLER ジャップロック・サンプラー 」05