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映像、書物、音楽などについての感想

ロジャー・イーノ『ビトウィン・タイズ』

Between Tides

Between Tides

ブライアン・イーノの弟ロジャー・イーノの2枚目にあたるソロ・アルバム。
'88年の作品。

普段、このアルバムを聴くことはない。
ただ、2年に1度くらい何度も何度も聴くときがある。
頭痛、腹痛で苦しんでいるときである。
このアルバムを聴くと、辛い頭痛、腹痛が結構楽になるのだ。

弦楽器、ピアノによる凡庸の極みとも思えるシンプルな和音のアルペジオが、安定感のあるコード進行に基づいてゆったりとしたテンポで何度もくり返し演奏される。
聴き込むタイプの音楽ではない。しかも、環境音楽として流すにはクールといえない中途半端にベタな音楽だ。

ただ、健康時には凡庸に感じられるこの安定感が頭痛、腹痛で苦しんでいるときに大きな“癒し”となる。
体調の悪いときに色々な音楽を試したのだが、このアルバムの効果がずば抜けていた。

イーノ兄の一連のアンビエントものや、サティのピアノ曲は“知的”なものが感じられて、弱った体にはあまり優しくない。
世によくあるヒーリング・ミュージックと称されるたぐいの音楽は、音響的に深みがなく安っぽいものが多い。そしていかにも“癒し”的なあざとさが感じられるばかりであまり効かない。

このアルバムでは愚直とも思えるシンプルなメロディー、コードが心地よい音響で流れ、その安定した響きが痛みを和らげてくれるのだ。不思議なくらいよく効く。
イーノ兄、ダニエル・ラノアらと仕事をした人ならではの“音響的効果”がほかのヒーリング・ミュージックと一線を画す理由なのかもしれない。ちなみにこのアルバムのプロデューサーはマイケル・ブルック。

ここ10年以上、体調の悪いときこのアルバムには随分助けられた。

先週、食あたりによる腹痛で苦しんだのだが、このアルバムを何度も聴いて、痛みを和らげることができた。


ロジャーは音楽学校を卒業後、病院で音楽療法士(music therapist)として病院で働いていたことがあるそうだ。
http://www.rogereno.co.uk/

ちなみにこの人のほかのアルバムや兄、ダニエル・ラノワとの共作『アポロ』にはこの痛みを和らげる効用はない。

このアルバム、私だけに効くのだろうか、以前からずっと疑問に思っている。

追記。
有名な「パッヘルベルのカノン」に通じるような音楽です。
ちなみに、兄イーノは『ディスクリート・ミュージック』でこの曲を取り入れているが、厚みのある音で構成されており、弱った体への癒しとはならない。

ディスクリート・ミュージック

ディスクリート・ミュージック

自分の経験からすると、同じオブスキュア・レーベルから出ていたハロルド・バッドの『パビリオン・オブ・ドリームス』の方が、永遠に続く“天上の音楽”のようで、弱った体に効果はある。
The Pavilion of Dreams

The Pavilion of Dreams