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映像、書物、音楽などについての感想

皆川亮二の漫画「ADAMAS」全11巻

漫画 書籍

ADAMAS(1) (イブニングKC)ADAMAS(2) (イブニングKC)ADAMAS 3 (イブニングKC)ADAMAS(4) (イブニングKC)ADAMAS(5) (イブニングKC)ADAMAS(6) (イブニングKC)ADAMAS(7) (イブニングKC)ADAMAS(8) (イブニングKC)ADAMAS(9) (イブニングKC)ADAMAS(10) (イブニングKC)ADAMAS(11)<完> (イブニングKC)

皆川亮二の作品を読み始めて「PEACE MAKER」「ARMS」に続く3作目。
脚本として岡エリという女性がクレジットされている。
漫画家で原作も書いている人のようだ。
そういうこともあってか今回の主人公は女性となっている。

ヒロインの成長、仲間との出会いと友情、男性との愛の成就が描かれた作品だ。

3作品読んだ印象では、登場人物の成長と仲間との絆は、この作家の大きなテーマの一つになっているようだ。

物語の背景はこんな感じだ。

一般に知られてはいないが、ジュエルマスターと呼ばれる、宝石の属性に由来する特別な能力者が存在する現代世界。
主人公の流崎麗華はダイヤモンドを守護石とするジュエルマスターの若き女性だ。
宝石商の一人娘として恵まれた環境で育ったが、事業の破産、父の失踪で現在はドラッグストアで働いている。
その一方、彼女はジュエルマスターとしての能力を使い、特別な依頼に応える“仕事人”として活躍しながら行方不明の父を探している。

読み終えた感想はなんとも不思議な漫画、という印象だ。
「ARMS」では残酷な描写も含めて、敵との対立、葛藤をかなりハードに描いていたが、この作品は非常に“緩い”。

当初、父の失踪に絡んだ敵対組織として登場していたシャニは、実は敵ではないことがわかり、そのトップであるジンは、敵から愛する人へと変化していく。
「ARMS」での悲壮な闘いを描き続けたことと対照的だ。

物語は数回の連載で終了するエピソードの連作としてつづられていく。
ジュエルマスターとして非日常的な世界で戦うエピソードがつづられるが、それと交互してドラッグストア、労働作業着製作会社、中学校など日常的世界を舞台にしたエピソードが挟み込まれる趣向だ。

もっとゴリゴリに対立、葛藤を描いてくれよ、という感想を抱く人もいるかもしれないが、私はこの作品結構気に入ってしまった。

また「PEACE MAKER」「ARMS」の主人公については私はあまり魅力を感じなかったが、今回の主人公はとても魅力的だった。
女性を主人公にしたことがよかったのかもしれない。

それと、女性が主人公ということで、戦いを描く話ではあるのだが、片方が勝ち、片方が滅びるという展開でなく、“和”という方向に着地点があるところにも新鮮なものを感じた。

この作家の絵についてはキャラクター描写、特に顔や表情について今までも違和感を感じるところがあった。
正直、今まで読んだ作品のなかで最もその部分の描写が安定していない作品という印象だった。
ほか、もろもろ突っ込みどころでも一番ある作品という感じだ。

だが、非常によかった。
読んでいて心地よい作品だ。

PEACE MAKER」「ARMS」とはまったく違う舞台設定、ストーリーだが、この作家ならではの世界を新たな趣向で楽しむことができた。
というか、この作家の語る根本的な部分はまったくぶれることがない。
ある意味で同じことを意匠を変えて語り続けているとも思える。
ただ、そこがいい。
これは優れた作家の特長だと思う。

はっきりいって傑作ではないと思う。いい意味での“珍品”という感じだ。
だが魅力のある作品だった。
11巻というボリュームもちょうどよかった。

ストーリーラインとしてはキム・ハドソンの「新しい主人公の作り方 アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術」を使うと作品分析ができそうな印象を抱いた。

新しい主人公の作り方  ─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術

新しい主人公の作り方 ─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術

また、性的な描写がまったくないのも、この漫画家の特徴であり、魅力だと改めて感じた。