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冨樫義博「HUNTER×HUNTER」1〜30巻

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以前、途中まで読んでいたのだが、話が進まないので中断、まとめて読もうと思っていた。30巻になったので1巻からまとめて一気に読んだ。ちょうどひと区切りついたところで終わっていた。
よかった。

この漫画を読んだ後、ネットを見た。熱心なファンがいるようで、下書きのような原稿での連載、パクリなど色々なことが書いてあった。あまりちゃんと読まなかったが。

ただ、なるほどと思うこともあった。
パクリ(広い意味での)については私も感じた。
ネットでは構図、絵柄についての指摘が多かったが、私はそれ以外のキャラの設定、ストーリー展開のパターンについても読んでいて「あれ、このシーン、この展開、このキャラクター、どっかで見た(読んだ)ことがある」、そんなことを思うことがあった。
作者はゲーム好きなようで、ストーリーもゲーム的に型にはまった展開する印象を受けた。
グリードアイランド編に至ってはゲームの中を登場人物が行動するという設定にもなっている。

ただ、それについて私は否定的ではない。面白いものを創るためには、自分の見聞きした面白いものをどんどんぶっこんでしまうという発想もありだろう。
ただ、型にはまった流れなので読んでいて、とてつもない面白さを感じることはなかった。

ただ、この作家はそれだけで終わらないというところが、私の好きなところだ。
創った世界、設定、キャラクターに入れ込むと暴走が始まる(これは私の印象だ)。

この漫画でいえば“キメラ=アント編”での展開がすさまじい。

ウィキペディアを見るとストーリーの区分けは以下のようになっていた。

・ハンター試験編(1〜5巻)
・ククルーマウンテン編(5巻) 
・天空闘技場編(5〜7巻)
・くじら島への里帰り編(8巻) 
・ヨークシンシティ(幻影旅団)編(8〜13巻)
・グリードアイランド編(13〜18巻)
・キメラ=アント編(18〜30巻)

“キメラ=アント編”は、30巻のうちの半分近い12巻分を占めている。ただ、メインのキャラクターであるはずのクラピカ、レオリオは登場しない。さらにヒソカ、幻影旅団のメンバーといった今までに登場した重要なキャラもほとんど登場せずストーリーに絡まない。
私はキメラ=アント編を読み始めたときは、メインストーリーのつなぎくらいだろうと思っていた。

だが、ストーリーが進むにつれてこの章が尋常でない盛り上がりを見せる。正直、なんじゃこれはという展開といっていいと思う。作品全体のバランスを崩しているし、そこでのキャラの変化、それぞれの絵柄の整合性とか考えると暴走といってと思う。
王と戦った会長は最後には漫☆画太郎の描いたキャラのようになってしまうし。
ただ、この“キメラ=アント編”が無茶苦茶に面白い。
ONE PIECE」のような巨大な人気を得るかというと微妙なところもあるが、“キメラ=アント編”を尾田栄一郎先生が描けるかというと無理だろう。
あっちはあっちで構成と人間の因果関係で盛り上げるものなので私は面白く読んでいるが、こんな神がかった(狂気じみた)表現はできないと思う。
おそらく作者の当初の意図を超えて物語が走っていったのだと思うが、すごいものを読んだという感じだ。
私にとって、こういう暴走が読めるのが漫画を読む大きな楽しみだ。
久しぶりに、びっくりするようなものを読んだ。

あと興味深かったのが、この“キメラ=アント編”が貴志祐介の小説「新世界より」を連想させたこと。登場人物が念動力などのスーパーパワーをもつということ、人間と違う知性をもった異形の生物と人間の戦いを描くといったところが共通している。
新世界より」が2008年8月に発行、「HUNTER×HUNTER」18巻が2003年10月発行。なのでパクリではないが、不思議な話の一致である。
以前、アマゾンの「新世界より」のレビューで「HUNTER×HUNTER」を引き合いに出して書いている人がいたが、そういうところから連想したのか、などと思った。その人の指摘自体はピンとこなかったが。

※この作品の場合、18巻から読んでもこの作家のユニークな面白みは充分に味わえると思う。