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映像、書物、音楽などについての感想

浅野いにおの漫画「おやすみプンプン」全13巻

書籍 漫画

おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 2 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 3 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 4 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 5 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 6 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 7 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 8 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 9 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 10 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 11 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 12 (ヤングサンデーコミックス)おやすみプンプン 13 (ヤングサンデーコミックス)

ケッタイな漫画である。
そして大変な労作である。
週刊ビックコミックスピリッツに6年半連載していたそうだ(初めはヤングサンデーだったとのこと)。
妄想のおもむくまま、6年半これだけ鬱な漫画を書き続けることができるということは相当な精神的タフさがなければければできないだろう。
ちょっとした偉業といってもいいかもしれない。

ただ、この漫画、見づらく読みづらい。
背景に写真画像を取り込んでいることと、細かな描き込みがこの作品の特徴だが、登場人物がそのなかに埋もれてしまっているのだ。
詳細に描かれた背景から登場人物が浮き上がるようにデフォルメ、強調をしていない。
最近、漫画をほとんど読んでいない私の漫画読解力では、漫然とぺージをめくっていると登場人物を見過ごしてしまう。
また、ストーリー構成も非常に不安定である。

目的の発生→努力→障害→葛藤・闘争→勝利、もしくは敗北

という通俗的ドラマ的展開からはかけ離れたものなので、この話一体どうなっちゃうんだという面白さはあるが、まったく安心して読めない。
宇宙兄弟」の読みやすさからすると天と地ほどの違いだ。

なかなかの意欲作、労作であることは間違いない。
ただ、内容については大いに?が残る。
作品の意図、意味ということを考えると、一体何だったんだろうということになってしまうのではないか。
伏線を張って収束するという構成には全くなっていない。
謎は解かれることなく終わる。もしくははっきりとは描かれていない。
この話を主人公を軸に一言で言えば以下のようになるのかもしれない(自信はない)。

自意識過剰でナイーブな小学生プンプンは、クラスに転校してきた“運命の人”田中愛子と出会う。
だが、愛子とはその後、疎遠に。
過剰な自意識を持て余すぷんぷんは社会のレールからドロップアウトしそうになりながらも、仲間を得てなんとか踏みとどまって青年となる。
そこに愛子が再び出現。プンプンは彼女と共に破滅に向かって進んでいく。

第1巻で小学生のプンプンは、田中愛子を「運命の人と出会ってしまった」と独白する(セリフ詳細は未確認)。
ただ、その運命の人とは男を滅ぼすファム・ファタールのことだったのだ。
全体を見通すとそういうことだったということになっている。
ただ、作者は当初はそのことを意識してはいなかったような気もする。
物語の構成はかっちりと決めず、編集というガイドはいるにしても出たとこ勝負で描き続けた。
ひょっとしたら、そんな風に作られた漫画なのかもしれない。

エンディングの物語の終着点については個人的には不満が残る。
だが、その前にプンプンが夢の中で愛子と再会する145話がよかった。
夢の中で死者と会い、別れを告げて現世に戻ってくるという内容なのだが、とてもいい雰囲気で心動かされた。
コマのつなぎ方、愛子のポーズ、表情の変化が本当に素晴らしい。
極上のモノクロサイレント映画のようだった。

カール・テオドール・ドライヤーの映画のような感じといえばいいのだろうか。

この漫画、いかにも中島哲也あたりが監督しそうな内容だが、それだけは避けてほしいというのが個人的な読後感である。映像ギミックを駆使して、悪い意味で通俗なドラマに仕立て上げそうな気がする。

うまく感想メモを書けなかったが、とりあえず記録に残す。